「Adobe MAX Japan 2023」参加レポート

2023年11月16日(木)に、東京ビッグサイトでAdobe MAX Japanが開催されました。
リアルイベントとして日本で開催されるのは2019年以来4年ぶりのことで、来場者は約3,600名とKeynoteのなかで発表がありました。こちらの記事では、弊社のデザイナー2名が現地で参加したイベントの様子をご紹介します。

Adobe MAX Japan 2023 開催要項はこちらの記事でご確認いただけます。
「Adobe MAX Japan 2023」が11月16日に開催されます

Keynote

Photoshop、Illustrator、Premiere ProなどAdobe Creative Cloudアプリケーションの主要アップデートが発表されました。今回は特に、Adobeが開発した生成AI「Adobe Firefly」に関するアナウンスや、生成AIを含む各種AIを搭載した新機能やツールについての発表が際立っていた印象です。

▽Photoshop

「生成塗りつぶし」や「生成拡張」の一般提供が開始されました。
「生成塗りつぶし」機能はベータ版提供の段階で私も使ってみたことがあるのですが、以前の「コンテンツに応じた塗りつぶし」の従来のAIによる予測で塗りつぶした場合に比べ、かなり自然な塗りつぶしができるようになっていて感激しました。しかも、複数のバリエーションをその場で比較して好みのものを選べるというのも嬉しいポイントです。二つの画像を自然に繋げたい場合や、画像内のコンテンツを削除したい場合などは、プロンプトは何も入力せずに生成ボタンを押すだけでいいというのも簡単でありがたいです。
「生成拡張」は、カンバスを拡張し、その拡張した空白部分を既存の画像と調和するように新しく生成されたコンテンツで埋めることによって、どんな画像のサイズにも変更することができる機能です。急なサイズや縦横比の変更依頼で、最初から作り直しになってしまう事態を避けられるかもしれません。その他、「削除ツール」や「コンテキストタスクバー」の改善、Adobe Photoshop Web版の一般提供開始などがアナウンスされました。

▽Illustrator

Adobe Fireflyを搭載した新機能「テキストからベクター生成」(ベータ版)の提供が発表されました。ベクターデータなので、プロンプトには”シンプル”というワードを入れるのがおすすめ、とTipsのお話も。6月にリリースされた生成再配色の他、イラストのスタイルを拾って踏襲することができるスタイルピッカー、作成した画像やデータを商品写真やブランディング用のモックアップに簡単に取り込むことができる「モックアップ」(ベータ版)、アウトライン化されたフォントをAdobe Fontsから類似のフォントを探し出し編集可能なテキストデータに戻す「Retype」(ベータ版)などの新機能も導入されました。Photoshopや他のアプリケーションに関しても同じですが、通常のワークフローの中で生成AIを使うことができるのがとても便利ですよね。Adobe Illustrator Web版(ベータ版)も新たに登場します。

▽Premiere Pro

自動文字起こしから、文字起こしベースでのさまざまな編集が可能に。
話しているときに、次の言葉がスラスラと出て来ず、「えーっと」、「あのー」など意味をなさない言葉が出てしまうことがありますが、これをフィラーワードというそうです。このフィラーワードを検出して削除したり、語間が長くなってしまっている場合も検出して不要な間を削除したりできるようになりました。テキスト側でハイライトした箇所が動画のタイムラインにも反映されるので、テキスト側で選んで要らない箇所を削除したり、順番を入れ替えたり、これまでとは違うアプローチで制作することが可能になりました。また、「スピーチを強調」機能が導入され、例えば環境音の大きな場所で撮影した動画でも、後ろのノイズを目立たないよう、かつ話している人物の声がクリアに聞こえるよう調整ができるようになりました。

▽After Effects

ロトブラシのトラッキング精度が上がり、人物の後ろに文字を入れる編集も簡単にできるようになりました。

▽Adobe Express

主に一般の方が簡単にグラフィックデータを作るために使用するツールで、プロのクリエイターが使う機会はないと思っているかもしれませんが、実はクリエイターも便利に使える機能が色々搭載されていますよ、というキャッチで、社内やクライアントとのコラボレーションツールとしての使い方を紹介。
デモでは、デザイナー側がIllustratorで作ったデータをExpressに読み込み、Express上でアニメーションをつけて動きのあるデザインを作成。変更や編集が不要そうな箇所はロックしてしてテンプレートを作成し、マーケターに共有。今度はマーケティングの方が日付を変えたり、翻訳機能を使って言語を変えたり、サイズを各種媒体用に調整して、そのままSNSに予約投稿をするところまで実演されていました。

LINEやnoteとも連携し、LINE広告や公式アカウント、noteのサムネイルで使用する画像や動画をAdobe Expressで手軽に作成できるようになるそうです。

▽Adobe Firefly

Adobe Fireflyの新しい3つのモデルについても発表されました。

1. Adobe Firefly Image 2 Model

Adobe Firefly Image Modelの次世代モデルです。従来のImage Modelに比べ精度が向上し、よりフォトリアルな画像生成が可能になりました。

2. Adobe Firefly Vector Model

ベクターグラフィックに特化した生成AIモデル。Illustratorの新機能「テキストからベクター生成」(ベータ版)に実装されています。

3. Adobe Firefly Design Model

Adobe Expressの新機能「テキストからテンプレート生成」(ベータ版)に搭載。Adobe Expressで編集可能な美しいテンプレートデザインを瞬時に生成します。

そして新しいモデルを搭載したAdobe Fireflyもどんどん便利になっています。

参照画像ギャラリーから選んだ画像や自分の持っている画像をアップロードすることで、その画像のスタイルを踏襲した画像を生成してくれる「スタイル参照」機能、絞りやシャッタースピードなどを調節できる「写真設定」機能なども搭載され、こんな画像が作りたいというイメージに近いものを生成しやすくなっています。特に、画像の雰囲気やイメージを言葉で忠実に表現するのはとても難しいので、画像から参照できるのはすごくありがたいですよね。現在は英語のみ対応ですが、プロンプトの候補を表示してくれる機能や、生成された画像から除外したい要素を入力するとその要素だけを削除してくれる機能なども増え、さらに実用的に便利に進化しています。

最後は現在開発中のプロジェクトとして「Project Stardust」が紹介されました。
画像データのなかのオブジェクトの位置関係や、前後関係、シーンを理解して、ユーザーが自由に編集、加工できることを目指し開発を進めているとのことで、人物の位置をドラッグで動かしたり、まるでレイヤーが分かれているかのように前後関係を入れ替えたり、写り込みを検出して削除したりする様子を実機によるデモで見せてくれました。Adobeの今後のプロジェクトにも期待が高まったところでKeynoteは締めくくられました。


午前中にKeynoteが終了し、そのあとはランチタイムを挟んで午後のセッションへと移っていきます。多くのクリエイターの方たちが来場していましたが、そこまで混み合わず、セッションの合間にゆっくり展示を見て回ることもできました。フードコーナーもわりと充実していて、お弁当屋さん、ローストビーフ丼のお店、サンドイッチのお店、台湾フードのお店などが出店していました。セッションが続いて疲れてきたときには甘いものを飲んでリフレッシュすることもでき、嬉しかったです。午後に参加した生成AI関連のセッションの内容については、生成AIを使用する上で気になるポイントなども聞くことができたので、また別の記事でご紹介できればと思います。

セッション会場の様子
会場入り口側にはフードコーナーも

オンライン配信のアーカイブも後日公開されるようなので、今回参加ができなかった方はぜひAdobeCreativeStationのYouTubeをチェックしてみてください。

https://www.youtube.com/user/AdobeCreativeStation